1Feb
今から約50年前に書かれた「知的生産の技術」(梅棹忠夫・著)という有名な書籍があります。
その中で著者は、整理や事務のシステム化は能率の問題というよりは、むしろ精神的な問題であると述べています。
これはむしろ、精神衛生の問題なのだ。つまり、人間を人間らしい状態につねにおいておくために、何が必要かということである。
かんたんにいうと、人間から、いかにしていらつきをへらすのか、というような問題なのだ。
整理や事務のシステムをととのえるのは、「時間」がほしいからではなく、生活の「秩序としずけさ」がほしいからである。
実際に、ミニマリストの方々の実践されていることを、自分も試してみると、この言葉の意味することがしっかりと体感できるようになってきました。
そして、この「秩序としずけさ」はモンテッソーリ教育の「秩序感」と「おしごと」共通しているところがある、とつくづく感じ入りました。
「秩序感」とは何か、そしてそれはミニマルライフとどんなふうに共通しているのかをシェアしたいと思います。
- 秩序感というコンパス(羅針盤)
- 子供にとっての羅針盤とは?
- 環境を整える重要性
秩序感というコンパス(羅針盤)
モンテッソーリ教育の中でよく聞く言葉に「秩序感」とか「秩序の敏感期」というものがあります。
秩序感とは、「生後数か月から見られ、2~3歳をピークとしてやがて消えてしまう感受性」です。
日本のモンテッソーリ教育の第一人者である相良敦子氏の書籍、「幼児期には2度チャンスがある ~復活する子どもたち~」の中にこのような文章があります。
自然は、この時期の子どもに、「秩序感」というコンパス(羅針盤)を与えています。子どもは、それを使ってまごつくことなく動きます。
だから、「子どもにとって外界の秩序は、大人が家を建てる地盤か、魚がその中で泳ぐ水にも相当する重要なものなのです。」とモンテッソーリは言っています。
「いつもと同じ」であることに強くこだわるのは、この時期に子どもが、一生懸命に周りの情報をファイリングしているためなのです。
「秩序」を羅針盤にし、自分を取り巻く環境を理解しようとしています。
また講談社の「絵本通信」のサイトコンテンツの中に「子育て相談 モンテッソーリで考えよう」というコーナーがあるのですが、その中で田中昌子先生が、「魔の2歳児の対処法」の回答の中で、この羅針盤のことを子供の脳の発達と関連付けて、具体的に説明してくださっています。
この時期は「秩序の敏感期」ともいわれ、大人がどうでもいいと感じることに対し、子どもは強いこだわりを持ちます。「場所、順序、時間、所有」などが一定でないと、心が穏やかでなくなるのです。
これは、子どもの発達と深く関係しています。秩序の敏感期の子どもは、初めて出会う身の回りの環境を、ひとつひとつ確かめながら自分のものにしていきます。自分の脳の中に、「羅針盤」のようなものを作り上げようとしている時期なのです。
脳の中に「羅針盤」ができてしまえば、子どもたちはそれを基準として、物事を「違っている」「合っている」などと判断できるようになります。
出典:http://ehon.kodansha.co.jp/blog/montessori/2.html
田中先生は、子供たちが脳の羅針盤をどうすればうまく使えるようになるのか、さらにわかりやすく教えてくださっています。
生まれて数年もたたない幼児前期の子どもは、私たちの世界をまだよく知りません。砂漠のど真ん中に放り出されたようなもので、道しるべは何もなく、右往左往しています。
子どもは道しるべを作るために、砂漠に指で線を引きます。それはすぐに風に吹かれて消えてしまうかもしれませんが、繰り返し、何度も同じところに線を引けば、次第にくっきりと刻みつけられ、やがては決して消えることがない道しるべとなります。
道しるべを作るために大切なことは、「場所、順序、時間、所有」などが一定であることです。一定の揺るぎない道しるべができて、初めて脳の羅針盤は機能しはじめます。
つまり、あるものがいつも同じ場所にある、毎日決まった順序でものごとが進んでいく、同じ人が決まったものを使うことは、子どもが一生懸命、小さな指先で砂に線を引く、それも同じところに引くために、どうしても必要なことなのです。
出典:http://ehon.kodansha.co.jp/blog/montessori/2.html
子供にとっての良い環境は、「わかりやすい、いつも同じ、シンプルである」ということですね。
そして幼児にとって「多すぎるモノや情報、不規則なリズム・生活」は、羅針盤を築き上げるのを難しくする原因となるとも言えます。
まだ子供がいない時期に、シュタイナーの幼児教育の講座を受けたことがあるのですが、生活習慣に関しては同じようなことをおっしゃっていました。
モンテッソーリもシュタイナーもこの点では同じ考えを持ってらしたのだな、と思います。
そう思うと、大人が子供のために環境を整えてあげることは、教具を揃えるより、はるかに重要だということがわかります。
環境を整える重要性
つまりのところ、できるかぎり、モノを減らして、規則正しいシンプルな生活の中で、子供は自分の羅針盤を築き上げることができるのですね。
うちの環境は、砂漠というよりむしろスクランブル交差点にいるような環境だったのではないか、と反省しているところです。
冒頭で引用させていただいた「知的生産の技術」の中で、梅棹氏は次のようにも述べています。
知的生産の技術のひとつの要点は、できるだけ障害物をとりのぞいてなめらかな水路をつくることによって、日常の知的活動にともなう情緒的乱流をとりのぞくことだといっていいだろう。
精神の層流状態を確保する技術だといってもいい。努力によってえられるものは、精神の安静なのである。
この羅針盤は子供だけに必要なのでははなく、人間なら誰しも持つべきものなんだと思います。自分自身は「秩序としずけさ」を手にいれているのか?と改めて考えさせられました。
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